1 インスリンによるGLUT4 translocationのシグナル伝達機序の解明 (1) 高浸透圧刺激によるGLUT4 translocationのメカニズム 3T3-L1脂肪細胞において高浸透圧刺激によるGLUT4 translocationを惹起するチロシンリン酸化蛋白の同定を試みた。高浸透圧刺激によるブドウ糖の取り込みはPI 3-kinase阻害剤、cylochalasin Dで抑制されないがチロシンキナーゼ阻害剤、PLC阻害剤で抑制された。一方、Gab1およびPLC-γが高浸透圧刺激によりチロシンリン酸化を受けPI 3-kinase阻害剤、cytochalasin Dで抑制されない事よりこれらの蛋白が高浸透圧刺激によるGLUT4 translocationに関与していることが示唆された(投稿準備中)。 2 インスリン抵抗性の機序の解明 (1)IRS-1セリンリン酸化の意義 インスリン刺激により惹起されるIRS-1セリンリン酸化によるIRS-1のgel mobility shiftはPI 3-kinaseの下流に存在するラパマイシン感受性経路を介することを見いだした。また同経路によりIRS-1蛋白の分解が生じインスリンシグナルの減弱をきたすことが判明した(投稿中)。さらにインスリン刺激によるIRS-1蛋白の分解はプロテアソームにおいて行われていることを見いだした(投稿準備中)。 (2) TNF-αによるインスリン抵抗性およびチアゾリジン誘導体によるインスリン抵抗性改善の機序 3T3-L1脂肪細胞においてチアゾリジン誘導体はTNF-αによるIRS-1およびインスリン受容体蛋白の減少を阻害することによりTNF-αによるインスリン抵抗性を改善することを見いだした(投稿中)。 (3) 成長ホルモンによるインスリン抵抗性の機序 成長ホルモン長期処置によりインスリン刺激によるブドウ糖取り込みが抑制される。このときインスリン刺激によるIRS-1のチロシンリン酸化、PI 3-kinase活性はむしろ増大しており、下流のAkt/PKBの活性化は低下していた。したがってPI 3-kinaseより下流のステップへのシグナル伝達が障害されていることが示唆された。
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