研究概要 |
シトステロール血症は早発性冠動脈硬化症を呈する常染色体劣性の遺伝形式をとり、生体ではごくわずかしか体内に吸収されない植物ステロールが異常に蓄積する疾患である。また、食事由来のコレステロールの吸収も増加していることから、この疾患の原因遺伝子の同定は食事由来のコレステロール吸収メカニズムの解明につながると考えられる。しかし、世界レベルで見ても50例未満の報告しかないきわめてまれな疾患である上に、遺伝子産物の異常も見つかっていない。そこで、1)未知遺伝子座の同定法の一つであるSTR(Short Tandem Repeats)による染色体地図を用いた患者遺伝子の解析、2)小腸よりのコレステロール吸収の増加が報告されている糖尿病を対象に、植物ステロール吸収に関与する遺伝子産物の検索も同時に行った。 1.STRによる解析 国際共同研究により世界10家系を用いたマッピングを行った。これにより、この病態の異常は第二染色体短腕21部位(microsatellite markerでD2S1788とD2S1352の間)に存在することが明らかとなった(ロッドスコアー4.49、θ=0.0)(Patel S,Salen G,Hidaka H et al.J Clin Invest,1998)。しかし、この遺伝子部位は15cMの範囲以内にあるものの、遺伝子配列を直接決定するにはあまりに大きく、家系を増やし、更に細部を検討するためのマーカーを用いて解析を継続している。 2.植物ステロール血症に関連する遺伝子産物の検索 シトステロール増加原因の標的臓器の一つと考えられ、食事由来のコレステロールに直接関与する小腸における検討を糖尿病をモデルとして行った。これによりインスリン欠乏下に糖尿病患者では植物ステロールの吸収が増加しており(Kojima et al.Atherosclerosis,1999)、腸管上皮細胞におけるインスリン作用低下に伴う細胞増殖亢進(Fujita Y,Kojima H et al.Diabetologia 1998)、及び分化抑制(Kojima et al.Proc Assoc Am Physiciants,1998)と密接な関連が示唆され、植物ステロールの吸収に関与する遺伝子産物を検索中である。
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