(1) 毛細血管変化と糖尿病発症時期との関係を明らかにした。 4週齢では正常コントロールとの間にラ氏島の形態および毛細血管に差を認めなかったが、インスリン抵抗性が出現し始める8週齢で、膵ラ氏島の形状は保たれていたが、一部の膵ラ氏島で毛細血管の拡張傾向を認めた。糖尿病を発症しだす16週齢になると、ラ氏島は拡大し、血流の乏しい領域、正常量の領域、血流の増大した領域が混在しているが、大部分で毛細血管の拡張が目立つ様になった。糖尿病を発症して4週間以上経過した24週齢では、拡大したラ氏島内で一部の領域に拡張した毛細血管を認めるのみで、大部分の領域で毛細血管は正常コントロールよりも狭小化し、粗になっていた。 ラ氏島毛細血管の拡張が、糖尿病による高血糖以前に生じており、インスリン抵抗性がラ氏島内毛細血管の拡張を引き起こしていると考えられた。16週齢のラ氏島の断面像を観察すると、拡大したラ氏島の最外周部の毛細血管は、正常ラ氏島の毛細血管と比較的近似していたが、その内側の毛細血管は著明に拡張していた。また、最深部では毛細血管を認めず、細胞間のcanaliculiと思われる部分に血流を認め、この段階で、毛細血管網が粗になる変化が生じていると考えられた。24週齢では、毛細血管は狭小化し、canaliculiの血流も減弱していた。 (2) 透過電子顕微鏡による観察では、毛細血管内の微小血栓を認めなかったが、毛細血管内皮細胞の肥厚化、窓形成、毛細血管を取り巻く周辺組織の肥厚を認め、毛細血管自体の変化が明らかになった。 (3) 腎糸球体毛細血管も膵ラ氏島毛細血管と同様に拡張しており、経過と共に一部で毛細血管血流の途絶、狭小化が生じていることが明らかになり、膵毛細血管と腎糸球体毛細血管変化が同様に推移していることが明らかになった。
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