自然発症糖尿病モデルラットOLETF(Otsuka Long Evans Fatty)におけるラ氏島内毛細血管変化を、共焦点顕微鏡によって、β細胞と同時に解析し、毛細血管変化の原因因子と糖尿病発症増悪への関与について分析した。ラ氏島内毛細血管は、インスリン抵抗性が出現し始める8週齢に拡張し始め、糖尿病発症時期には著明な拡張を呈し、糖尿病発症後、狭小化し粗になることが明らかになった。また、インスリン染色性が良好なラ氏島辺縁部では、毛細血管網の密度、径は対照と変わらぬが、内側の毛細血管拡張が顕著であり、最中央部では毛細血管が狭小化し粗であることが判明した。さらに、canaliculiと考えられる微細な流れが、毛細血管拡張部や狭小化部分では見られないことを明らかにし、canaliculiへの流入障害がラ氏島機能に影響していると考えた。この毛細血管には毛細血管症様の構造変化が生じていた。糖尿病発症後のラ氏島では、β細胞が存在しない毛細血管網様構造領域や、毛細血管網が発達していない小β細胞集塊の散在を認めた。。OLETFでは、糖尿病発症時、ラ氏島が肥大化し、一見、十分なβ細胞量が存在するようであるが、ラ氏島内毛細血管変化による血流不全の部分が多く、そのため、一部のβ細胞領域のみが有効な機能を発揮し、相対的にβ細胞機能不足となっていると考えられた。 さらに、毛細血管変化の予防により、β細胞機能低下を抑制可能かの検討を試みたが、インスリン抵抗性が改善されてしまい、予防効果は不明であった。
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