1)糖尿病および高脂食負荷におけるHDL受容体(HB_2発現の検討 Wistar ratを屠殺後、肝および肺をを摘出し、グアニジンチオシアネート・セシウムクロライド濃度勾配法を用いてtotal RNAを抽出し、mRNAを精製した。これをもとに、逆転写酵素(M-MuLV RTase)によりcDNAを合成し、これを鋳型としてPCRを行い目的のDNAフラグメントを増幅、HB_2のDNAプローブを作製し、HB_2の組織分布を検討した。HB_2mRNAは、脳、肺、に強くそして肝、腎にもその発現を認めた。 2)HB_2のHDL受容体としての役割の解明 HB_2の発現はヒト単球性白血病細胞株であるTHP-1細胞をphorbol esterでマクロファージ化し、この細胞培養液中に50、100μg/mlの濃度でアセチルLDLを添加しコレステロールエステルを細胞内に負荷した後、THP-1細胞およびマクロファージよりHB_2mRNAの発現量をNorthernblot analysisにて比較検討した。マクロファージにアセチルLDLを添加することで、添加量に依存して細胞内のコレステロールエステル含量は増加した。一方HB_2mRNAは、THP-1cellをphorbol esterによりマクロファージに分化させることで発現は増強されたが、コレステロールエステル負荷により用量依存的に発現は低下した。 3)ラットメサンギウム細胞におけるHB_2の発現の検討 HB_2mRNAは、脳、肺、肝とならびに腎に発現を認められていた。ラットメサンギウム細胞は、マクロファージとその起源は近いと考えられ、THP-1細胞と同様の調節機構が存在する可能性が考えられた。ラット腎臓より糸球体を単離し、初代培養系を作製し、メサンギウム細胞およびphorbor esterにて刺激後HB_2mRNAの発現を検討した。しかし、メサンギウム細胞においては、その発現は弱く、phorbor ester処理における発現量の変化は観察されず、メサンギウム細胞におけるHB_2の発現は、マクロファージとは異なる機序によると考えられた。この発現調節機構に関しては、さらに詳細な検討が必要と考えられた。
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