研究概要 |
1.NODマウスの膵島炎におけるcaspase阻害剤の有効性の検討 雌NODマウスのシクロフォスファミド(CP)誘発糖尿病に対するz-VAD-fmk腹腔内注射の効果を検討した。CP注射1週後からz-VAD-fmk0.1mg/日を開始した前年度の研究では,発症率には差がないものの治療群の方が発症が遅い傾向がみられた。そこで,今年度は多数のマウスを用い,投与量を増やし,注射開始時期を早め,組織像を含めて検討した。CP注射後3日〜14日の間15匹にz-VAD-fmk0.2mg/日を,他の15匹に溶媒を投与したところ,2週後までの発症は対照群8匹,注射群5匹であった。3週後までに対照群の発症マウスの3匹が死亡したが,今回も処置群に死亡したマウスはいなかった。3週間後の時点で生存していたマウスの膵組織像を5段階で検討したところ,膵島炎がgrade 2以下であったマウスは対照群は3匹のみ,処置群は9匹であった(p=0.025)。以上よりcaspase阻害剤が膵島炎のβ細胞傷害を部分的に抑制することが示唆された。 2.マウス膵島細胞のFasを介するアポトーシスのin vitroにおける検討 マウスβTC1細胞にヒトFas遺伝子を導入して作成したhFas/βTC1細胞の,ヒトFas抗体によるアポトーシスに対し,オレイン酸は増強効果を示した。オレイン酸単独では傷害作用は軽微であり,NAD含量の減少を来たさなかったが,ATP含量は11%低下した。また,Western blottingによる検討ではオレイン酸はbcl-2およびbaxの発現レベルには影響しなかったが,bcl-xに対し軽度の抑制作用を示した。生体内では膵島細胞のFasを介するアポトーシスに高FFA血症が関与している可能性がある。
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