研究概要 |
【方法】RLB-5/2を移植前後に頻回投与(10×20mg/kg,-7日→+21日)することで、-7日のBNラット(RT1^n)皮膚移植により感作したLEWラット(RT1^l)に対する(LEW×BN)F1移植心は拒絶を免れ、96%がドナー特異的免疫寛容を獲得する。この寛容は抗原活性化LEW脾細胞の移入によっても破壊されず、寛容ラット脾には別のテストラットに寛容を次々に移入できるCD4^+調節性T細胞が誘導されている。 今回、胸腺摘除あるいは、移植心摘除を種々のタイミングで行い、寛容誘導率や寛容ラット脾細胞(1×10^8個)の移入実験における寛容移入率、さらに移植心浸潤リンパ球のTh1,Th2由来サイトカインのmRNA発現らを検討した。 【結果】移植前に胸腺を摘除したラットでのみ寛容誘導率は約50%に低下し、その寛容ラット脾細胞の移入では寛容を伝えられなかった。さらにこの寛容ラットへrIL-2あるいは抗原活性化脾細胞を投与することで拒絶反応が引き起こされた。また移植心でのIL-2、IL-4、IL-10 mRNAはEuthymusの寛容ラットと同様に著明に発現が抑制されていたが、IFN-γだけは有意に高く発現していた。 Euthymusの寛容ラットにおいて移植心を摘出しても、その1カ月後には脾細胞は移入による寛容伝達能力を失っていた。2〜3カ月後では寛容の記憶自体を失い二次心移植を拒絶した.また脾細胞移入実験の際に、移入後心移植が遅れたり、脾細胞を長時間抗原刺激のないin vitroに置いてから移入すると、寛容が伝えられなかった。なお長期生着心をLEWへ再移植すると急性拒絶された。【結論】以上より本モデルではclonal anergyに加え、胸腺依存性に生み出され抗原刺激によって維持あるいは伝達(infect)される調節性T細胞の二つのメカニズムが働き、より安定した寛容システムとなっていた。しかし移植心の抗原性は保持されておりgraft adaptationは寛容維持に関与していなかった。
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