研究概要 |
nondepleting タイプ抗CD4mAb(RIB-5/2)の短期投与により感作ラットに誘導した免疫寛容にはCD4^+IL-4産生型Th2様の調節性T細胞(調節T)が誘導されているが、この調節Tの誘導のためには移植時における胸腺の存在が必要であり、胸腺摘除ラットに誘導された寛容はclonal anergyのみであった。 また調節Tの維持は抗原依存性、即ち寛容維持期において移植心を除去すると2週間以内に"移入により寛容を誘導できる" 調節Tが失われる事が判明したが、4週後でも寛容が維持されていることもあり、anergyの持続を示唆した。それ以降では寛容は消失したが、ドナー反応性抗体(IgM,IgG)の増加はなかったことから、B細胞anergyはT細胞anergyより長期間続くものの寛容には寄与しないと考えられた。 一方、寛容維持期ラットの脾細胞を軽度放射線照射されたテストラットへ移入して成立させた寛容モデルから移植心を摘出して2週間後、新たにドナーの心臓を同モデルに移植したが、二次心は拒絶されなかったことより、調節Tの移入により成立させた寛容ラットにもclonal anergyの機構が獲得されていることが示唆された。 さらに、寛容ラットに二次心を移植した時のグラフト内のサイトカインの変化を検索したところ、移植後10日では、IL-4 が二次心で発現され一次心では消失し、IL-10とIFN-gが一次心で強く発現されていた。しかし長期経過後はいずれも発現が抑制されており、二次心移植時に調節Tが一次心から二次心へ移動して活性化したことが示唆された。 以上、本モデルにおける免疫寛容にはT細胞clonal anergyと調節Tの二つが働いており後者はよりドナー抗原依存性で、前者を誘導するが如く作用する。
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