研究課題/領域番号 |
10671099
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
外科学一般
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
武田 泰隆 東京大学, 医科学研究所, 助手 (40163422)
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研究分担者 |
清水 本武 都臨床研, 化学療法部, 主任研究員 (10124463)
松沢 昭雄 東京大学, 医科学研究所, 教授 (50012745)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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キーワード | 癌遺伝子治療 / Fas-FasLシステム / アポトーシス / マウス肝癌 / マウス乳癌 / Murine mammary tumor |
研究概要 |
本研究では、あまり解析の進んでいないFasを介するアポトーシスによる抗腫瘍作用を解明し臨床的に応用することを目的として、Fas非発現マウス肝癌株MH134にベクターを用いてFas cDNAを導入したFas発現MH134細胞株(F6b株)を実験材料として研究を行った。In vitro実験においてF6b株を単クローン抗Fas抗体Jo2抗体と反応させて、その抗腫瘍効果をMTT assayにて検討したところ、200ng/mlでほぼ100%の細胞死を誘導した。この細胞死が実際にアポトーシスにより誘導された細胞死であることを蛍光核染色で確認した。同様にアポトーシス誘導能が証明されている精製可溶性リコビナントFasLでも、アポトーシスが誘導された。In vivo実験では、宿主に対する抗Fas抗体とFasLの肝臓障害作用を回避するために、ダブルミュータントマウスC3H-gld/gld・lpr/lpr(C3H-gld/lpr)を用いて癌ターゲット治療実験を行った。マウス皮下にF6b株を移植してJo2抗体50μgを投与するを、一過性の腫瘍の縮小あるいは腫瘍発現の遅延がみられた。一方、マウス腹腔内にF6b株を移植してJo2抗体50μgを投与すると、有意な延命効果がみられた。しかし、いずれの場合も完全治癒は達成されず、Fas発現を失いJo2抗体に対し耐性の腫瘍細胞の増殖がみられた。可溶性リコビナントFasLを用いても、一過性の抗腫瘍効果はみられたものの、完全治癒は得られなかった。一方、近年、かなり多くの腫瘍がFasを発現しているとの報告があることから、Fasを弱く発現しているマウス乳癌株MM2にFas cDNAを導入し、Fas強発現MM2細胞株(C8h株)を樹立した。MM2はFasを発現しているにもかかわらず、Jo2抗体およびリコビナント可溶性FasLに対して全く反応を示さなかった。In vitro実験においてC8h株をJo2抗体と反応させて、その抗腫瘍効果をMMT assayにより検討したところ、最大限で約60%の細胞死しか誘導しなかったが、可溶性リコビナントFasLはほぼ100%のアポトーシスを誘導した。そこで、C8h株をJo2抗体または可溶性FasLで約2週間処理し、Jo2抗体および可溶性FasLに対する耐性獲得の有無を検討したところ、抗体-抗体では完全耐性、抗体-FasLでは不完全耐性となり、FasL-抗体およびFasL-FasLでは感受性を維持していた。また、細胞表面のFas抗原の発現をFACSで検討すると、抗体処理では減少していたが、FasL処理では減少はみられなかった。この結果から、Jo2抗体と可溶性FasLではFas抗原に対するエピトープおよび細胞内シグナル伝達の経路が異なっていることが示唆された。さらに、可溶性リコビナントFasLによる治療の方が耐性を生じ難く、高い抗腫瘍活性が得られることも示唆された。
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