研究課題
基盤研究(C)
小口径人工血管の吻合部内膜肥厚を検討するためには、臨床において用いられている端側吻合部の血流異常、特にheel側におけるto-and-froの血流によるずり応力の血管内皮細胞や血管平滑筋細胞等の血管構築細胞に対する影響を検討する必要がある。そこで、高脂血症兎頚動脈人工血管置換モデルを用い血管新生抑制物質であるAGM-1470の吻合部内膜肥厚に与える影響について以下の要領で実験的検討を行った。1.<目的>血管平滑筋細胞・血管内皮細胞をずり応力下で培養し、ずり応力の血管平滑筋細胞に対する影響を検討する<結果>両方向性のずり応力を負荷されることにより、血管平滑筋細胞の遊走能は抑制され、増殖能は亢進された。血管内皮細胞は、平滑筋細胞の遊走能を亢進する液性因子を培養液中に産生したが、増殖能を亢進させなかった。血管内皮細胞産生増殖因子を介した平滑筋の遊走能は、ずり応力により直接的に抑制された。2.<目的>in-vitroにおいて、血管新生抑制物質であるAGM-1470が血管平滑筋細胞自身の遊走・増殖能にどのように作用するか検討する<結果>血管内皮細胞がずり応力下で産生する増殖因子は、主としてPDGFであることが示され、AGM-1470はその産生を抑制した。AGM-1470は、ずり応力下の血管内皮細胞が産生する増殖因子のない状態では、血管平滑筋細胞の増殖能には影響を与えず、遊走能には抑制的な影響を与え、増殖因子存在下においても血管平滑筋細胞遊走能を抑制した。3.<目的>最終的にin-vivoにおいて血管新生抑制物質AMG-1470が、局所投与により内膜肥厚に与える影響を検討する。<結果>AGM-1470局所投与は高脂血症ウサギ頚動脈ePTEEグラフト置換モデルにおいて、重大な全身性副作用を認めずに吻合部内膜肥厚を抑制した。今後、新しいdrug delivery systemの開発が進めば、さらに薬剤の投与プログラムを調整することが可能となり、AGM-1470局所投与は吻合部内膜肥厚抑制の良い治療戦略になりうると考えられた。
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