研究概要 |
前年度の研究結果:外科侵襲後の尿中リン排泄量(u-Pi)を規定するのは,(1)筋蛋白の崩壊の程度であり;(2)副甲状腺ホルモン(PTH)の関与は少ない. この結果から生じた疑問:外科侵襲後には,筋蛋白の崩壊とそれにともなうu-Piの増大は避けられない.生体は外科侵襲の程度により腎のPTHに対する反応を変えてPiを体内保持しているのではないか? 実験方法:(1)体重250-300gのWistar系ラットで,前胃と後胃との境を切離し,直ちに再吻合する外科侵襲を加え中心静脈栄養管理とした.対照は手術操作を加えないラットを用いた.(2)16時間後に腎クリアランス・テストをおこない,ラットの甲状腺と副甲状腺とを摘除した.この後,PTH(PTH-(1-34);Sigma Chemical,St.Louis,MO)の投与前後で2回のクリアランス・テストを施行した.PTHの代わりに同量のsalineを投与したラットをタイム・コントロールとした. 結果:(1)胃切ラットは全経過を通じて対照に比べ,尿中norepinephrine排泄量が増加した.(2)胃切ラットのu-Piは対照と差がなかったが,尿中cyclic AMP排泄量(u-cAMP)は低下した.(3)胃切ラットでは対照ラットに比べて,PTH投与によるu-cAMPの増加が明らかに少なく,尿中Pi排泄分画も少なかった. 結論:手術侵襲が大きいとPTHに対する腎の反応は低下し,u-Piを少なくしてPiを体内貯留させる.
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