研究概要 |
低分子量G蛋白RalはRasの下流に位置しており、シグナル伝達上RalBP1(Ral binding protein 1)を介してCdc42/Racを制御し、細胞骨格形成の関与が推測されている。そこでRasからのシグナル伝達経路を解明するために、RalBP1に結合する新規のシグナル伝達蛋白質を検索したところReps蛋白(RalBP1 associated eps 15 like library)をクローニングすることができた。(平成10年度報告)Reps蛋白は743個のアミノ酸からなり、EGF受容体基質様領域(eps15)、EF-handモチーフ、SH3領域が結合すると思われる2ヶ所のプロリンに富む領域および3個のMAPK基質領域を有していた。これらのことを踏まえてReps蛋白の機能解析をおこない、次の結果を得ることができた。 1)Myc-RepsをCOS7細胞に発現させ、EGF添加後NP40 lysateをつくり、抗Myc抗体にて免疫沈降後、抗リン酸化チロシン抗体を用いてリン酸化状態を検索したところ、EHドメイン近傍の236Tyrosineにリン酸化が認められた。 2)Reps蛋白においてSH3蛋白が結合すると考えられるプロリンに富む領域が確認できたため、その領域への結合蛋白を検索したところ、SH3領域を有するCrkおよびGrb2アダプター蛋白と複合体を形成することが認められた。 これらの結果によりEGF受容体からのシグナルをうけてReps蛋白のリン酸化が誘導される2経路が推測された。1つはEGF受容体からのシグナルをアダプター蛋白を介してReps蛋白に伝達される経路、もう1つはEGF受容体のシグナルからRas蛋白が活性化され、ついでRal,RalBP1(Ralbinding protein)の活性化が生じ、Reps蛋白に伝達される経路である。 以上よりReps蛋白はEGF受容体からシグナルを受けて生化学反応が伝達されることが確認され、このRalシグナル経路はendocytosis,cytoskeltonなどをはじめ、シグナル伝達解明に重要なPathwayであることが認められた。
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