研究概要 |
【はじめに】前年度は、ラットの肝虚血再還流障害(I/R Injury)モデルにおいて、好中球の類洞からのmigrationおよび肝細胞への接着に関与しているとされる接着分子ICAM-1、Mac-1の経時的変化について検討した。 肝細胞に接着した好中球はproteaseや活性化酸素などのcytotoxic mediatorを放出し肝細胞壊死を引き起こすとされているが、近年apoptosisによる細胞死(類洞内皮細胞や肝細胞)のI/R Injuryへの関与が指摘されている。さらにapoptosisが引きがねとなり、好中球のmigrationさらには肝細胞障害をひきおこすという報告もある。そこで今年度は昨年と同モデルでapoptosisによる肝細胞死、好中球数(PMN)、および肝細胞壊死範囲(NA)の経時的変化につき検討した。【方法】実験はWistar系雄性ラットを用い阻血実験4週間前に脾臓の皮下植え込み術を施行した。30分と60分のI/R後上記パラメーターを計測。apoptosisによる肝細胞死はTUNEL法により同定し、単位肝細胞あたりのTUNEL陽性細胞数をApoptotic Index(AI)とした。PMNはn-ASDクロロアセテート染色後カウントし、NAはH.E.染色後マッピングし計測した。【結果】30分のI/R後AI、PMN、NAのピークはそれぞれ3h,6h,12hであった。60分のI/R後AIは時間の経過とともにほぼ一方向性に増加し24h後にピークとなった。PMN、NAのピークはそれぞれ12h,24hであった。また60分群のピーク値はいずれも30分群に比べ有意に高値を示した。【結論】肝のI/R Injuryにおいて虚血時間の長さがその後の肝障害の程度を決定し、またapoptosisによる肝細胞死がtriggerとなり好中球の遊走、接着さらには肝細胞壊死が引き起こされる可能性が示唆された。
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