研究概要 |
1. T細胞受容体α鎖欠損(TCRα-/-)マウスの炎症性腸疾患(IBD)発症に対する食餌抗原の影響 成分栄養(ED)群ではIBD発症はほぼ完全に抑制され,粘膜固有層の抗体産生細胞数も通常飼料(RD)群に比し著減していた. 2. ED投与による腸内細菌叢の変化 腸内細菌叢の検索ではRD(発症)群に高率にみられたBacteroides vulgatusがED群では検出されなかった. 3. ED投与によるCD4+,ββT細胞の機能変化 CD4+,ββT細胞はED群においてもRD群とほぼ同様に出現していたが,このT細胞群のVβの発現様式はRD群ではVβ8が優位であったのに対しED群ではVβ6およびVβ14が優位であり,発現パターンに差がみられた.さらに,このT細胞のmRNAを用いたPCR-SSCPによるclonalityの解析ではRD(発症)群のオリゴクローナルなパターンに比しED群ではポリクローナルな傾向であった. 4. B.vulgatusの病態に対する影響 in vitroの培養系ではB.vulgatusはTh2型サイトカインの産生を優位に誘導し,ββT細胞のclonalityの検索ではよりオリゴクローナルな増殖を誘導した. (まとめ) in vitroでB.vulgatusによってTh2型のオリゴクローナルなββT細胞が誘導されたことは,EDによる発症抑制効果の機序に常在菌であるB.vulgatusを認識するTh2型ββT細胞のclonalな増殖が関与していることか示唆された.現在,B.vulgatusの直腸内投与により,このモデルにおけるB.vulgatusを中心とする常在細菌叢の病態への影響をin vivoで検索する研究の進行中である.さらにCD4+,ββT細胞に相当するような特定の腸内抗原を認識して病態に影響を及ぼしているT細胞サブセットを臨床例にての検索法を検討中である.
|