研究課題/領域番号 |
10671114
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鍬方 安行 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (50273678)
|
研究分担者 |
田中 裕 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (90252676)
杉本 壽 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90127241)
|
キーワード | 酸素運搬量 / 酸素消費量 / 酸素代謝 / 敗血症 / サイトカイン / Interleukin-1β / ショック |
研究概要 |
本研究の目的は、敗血症のkey cytokineのひとつであるinterleukin-1β(IL-1)の惹起する末梢血管抵抗減弱型ショックが、酸素運搬量(DO_2)-消費量(VO_2)関係におよぼす影響を明らかにすることである。平成10年度に完成したウサギ可変心拍出量モデルを用いた。Hemodynamics、DO_2、VO_2のbaseline測定の後、IL-110μg/kgを静脈内投与(IL-1群;n=7)し、30分後から段階的に心タンポナーデによってDO_2を減少させてDO_2-VO_2曲線をプロットした。対照では等量の生理食塩水を静脈内投与(ctrl;n=8)し、同様に測定した。DO_2の臨界値(DO_2crit)はdual-line methodを用いて算出した。あわせて門脈血を採取し、DO_2と門脈血酸素分圧(PpO_2)、乳酸濃度(Plac)の関係を検討した。IL-1投与により、心拍出量に変化をきたすことなく(138±21 ml/kg/min from baseline 137±33)、平均動脈圧が有意に減少し(65±11 mmHg from baseline 85±7)、典型的な末梢血管抵抗減弱型の血行動態を示した。DO_2critは有意に左方偏位(8.7±1.7 ml/kg/min vs ctrl 11.7±0.7)し、supply-independent部分の勾配が急峻化(0.19±0.02 vs ctrl 0.11±0.02)した。IL-1群とctrlのDO_2-VO_2データ分析の乖離は、supply-independentの領域でDO_2低下とともに拡大し、DO_2crit以下ではむしろ差が消失した。IL-1群ではctrlに比し同等のDO_2にたいし、PpO_2およびPlacがより高値をとる傾向がみられた。IL-1群でのDO_2critの左方偏位は、あたかも組織酸素利用が向上したかの印象をあたえるが、重要なのはsupply-independent部分の勾配の急峻化である。この部分でVO_2がDO_2依存性に低下することは、一見十分なDO_2が確保されていても低酸素に陥った組織が存在することを示唆している。また、PpO_2、Placの測定結果から、末梢血管抵抗減弱にともなう組織血流分布異常が、腸循環で生じていることが示唆された。
|