研究概要 |
我々が樹立した甲状腺未分化癌細胞株(ACT-1)の増殖能、転移能を検討した。細胞倍加時間は約48時間であった。SCIDマウスの皮下に2.5×10^5cell注入すると、皮下に生着するとともに3ヵ月後に肺転移が認められた。また、尾静脈より3.0×10^5cell注入しても3ヵ月後に実験的肺転移が認められ、ACT-1が可移植性細胞株であることが判明した。 次に、ACT-1の機能面を検討した結果、培養液中にIL-6、IL-8、M-CSF、GM-CSF、VEGFを高濃度に分泌していた。ACT-1におけるVEGFmRNAレベルでの発現をRT-PCR法にて確認し、免疫組織化学的にもACT-1を樹立した未分化癌患者のオリジナルの手術材料においてVEGF蛋白が発現されていることを確認した。 ACT-1におけるVEGF分泌の調節機構を検討するために、培養液中にIL-6またはIL-8を添加し、ACT-1からのVEGF分泌量を測定した。IL-8を1ng/ml,10ng/ml,20ng/mlの濃度にした培養液でACT-1を4日間培養し培養液中のACT-1が分泌したVEGF濃度を測定したが、IL-8無添加に比し有意差は認められなかった。よって、IL-8はACT-1のVEGF分泌能に何ら影響は及ぼさないと考えられた。一方、IL-6を1ng/ml,10ng/ml,20ng/mlの濃度にした培養液でACT-1を4日間培養した場合、IL-6濃度が10ng/ml,20ng/mlの培養液中のVEGF量はコントロールに比し有意に高値であった。さらにIL-6の影響を確認するために抗IL-6抗体をIL-6添加培養液に追加すると、IL-6によるVEGF分泌亢進効果が中和された。 以上より、ACT-1自ら産生しているIL-6によりVEGF分泌を亢進させ、in vivoにおいて腫瘍血管を新生させて腫瘍増殖を促准させているのではないかと思われた。
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