肝臓に酵素のリザーバーとしてミオグロビン遺伝子を導入し発現させることにより、肝臓の阻血状態、臓器保存状態での肝障害の保護効果を動物実験で検討することを目的として、マウスの肝臓にミオグロビン遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターを用いてミオグロビン遺伝子の導入を行った。 293細胞を継代培養し、ミオグロビン遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターを感染させ、徐々にスケールアップして大量培養として回収し、超遠心分離と透析で精製分離した。精製したミオグロビンアデノウイルスをマウスの陰茎静脈より投与し、3日後肝組織を採取してmRNAを抽出しミオグロビン遺伝子に特異的なプライマーを用いてRT-PCRを行った。また、抗ヒトミオグロビン遺伝子抗体を用いて遺伝子導入マウスの肝臓の免疫染色を行い、肝組織でのミオグロビン遺伝子の発現が確認された。肝阻血再潅流障害モデル作成のため、C57BLマウスを麻酔下に開腹し肝十二指腸靱帯のクランプによるプリングルの操作を加え、24時間後肝組織標本を採取しDNAを抽出しアガロース電気泳動にて、アポトーシスによるDNAラダーを検出した。また組織標本のTUNEL染色を行い肝細胞にアポトーシスを認めた。ミオグロビン遺伝子導入マウスの肝臓ではアポトーシスが少なく、血清ALTもコントロール群では再灌流後上昇したが、遺伝子導入群では正常値を維持した。肝臓へのミオグロビン遺伝子導入の阻血再灌流障害に対する肝細胞保護効果が明らかとなった。
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