本研究では胸腺内ドナー特異的寛容誘導モデルを用いて胸腺内未熟T細胞のアロ抗原認識におけるの詳細な解析行うことを目的とした。 心移植モデルには、ドナーにLEW(RT1^l)、レシピエントにBUF(RT1^b)、およびサードパーティーとしてACI(RT1^a)によるラット同種異所性(腹腔内)心移植を用いた。胸腺内免疫寛容誘導のため、LEW心移植の21日前に25x10^6個のLEWドナー脾細胞をBUFレシピエント胸腺内に、また、同時に1mlのALSを腹腔内に投与した(IT+ALS)。チロシンキナーゼ阻害剤(ゲネスチン)、カルシニューリン阻害剤(サイクロスポリンA、タクロリムス)を用いた寛容誘導阻害実験にて、胸腺内免疫寛容誘導に必須の胸腺細胞内蛋白を同定を進めた。心移植後14日目のBUFレシピエントリンパ節細胞のLEWドナーあるいはサードパーティーであるACIリンパ節細胞に対する細胞傷害活性およびIL-2産生能を調べた。さらに、チロシンキナーゼ阻害剤、カルシニューリン阻害剤のALS投与後の胸腺細胞発達に与える影響を調べるため、フローサイトメトリーにより経時的に細胞分画の割合計測を行った。 今回のin vitro実験でもIT+ALSによりドナー特異的免疫寛容が誘導され、チロシンキナーゼ阻害剤投与で寛容誘導が阻害され、カルシニューリン阻害剤投与では寛容誘導が阻害されないという結果が得られた。また、ゲネスチン、サイクロスポリンAは胸腺細胞発達段階において胸腺細胞分画に影響を与えていなかったが、タクロリムスはポジティブセレクションを障害することを示唆する結果が得られた。 以上より、我々のモデルにおける寛容誘導にはレシピエント胸腺細胞内のチロシンキナーゼの活性化は必須であるが、力ルシニューリンの活性化は必須ではないと推察された。
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