研究概要 |
1)本研究の目的は、膵ドナー不足に対応するため,ひとつの膵臓を膵頭部と膵体尾部に分離して、それぞれを別個のrecipientに移植するという二分割膵移植の術式を考案すること、急性拒絶の非侵襲的なマーカーの感受性、特異性を調べること、細胞診の有用性を確立すること、膵臓の虚血・再灌流障害を軽減する工夫を見つけることが目的である。 2)犬を用いて、膵体尾部を遊離し、膵頭部は摘出する。膵体尾部の動静脈をクランプし、90分の虚血を行う。炎症性サイトカイン(IL-1β,TNFα)の産生を抑制することが示されているFR167653という薬剤を虚血前後で投与し、膵体尾部の虚血・再灌流障害を軽減しうるか否かを生理学的(組織血流)、血液生化学的(膵外分泌、内分泌機能)、病理組織学的(H&E 染色、免疫染色)に検討した。また、膵虚血・再灌流時の遠隔臓器に対する影響についても検討した。FR167653を投与すると、RT-PCR法にてIL-1βの産生抑制が示され、膵外分泌障害の軽減、内分泌機能の維持が観察された。同時に肺、肝臓等遠隔臓器障害の軽減が観察された。この成果は英文論文として現在投稿中である。 3)同様に犬を用いて、膵体尾部と左腎に同様な虚血・再灌流障害を加え、FR167653の効果を検討した。FR167653を投与すると、膵単独時と同様に膵虚血・再灌流障害の軽減と腎虚血・再灌流障害の軽減(血清クレアチニン、H&E染色)が観察された。 4)今後の研究の展開として、自己移植部分膵が灌流、保存、移植の過程で長期にわたり機能を保ちうることを証明し、さらに1頭のdonorから2頭のrecipientに膵頭部と膵尾部を分割して移植する二分割膵移植の術式を確立させる。
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