研究課題/領域番号 |
10671124
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
外科学一般
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
廣田 昌彦 熊本大学, 医学部・附属病院, 助手 (80284769)
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研究分担者 |
箕田 誠司 熊本大学, 医学部・附属病院, 助手 (10671125)
小川 道雄 熊本大学, 医学部, 教授 (30028691)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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キーワード | 癌転移 / サイトカイン / TNFα / E-セレクチン / CA19-9 / エラスターゼ / no-touch isolation / 手術侵襲 |
研究概要 |
外科手術後などの侵襲時には、TNFα、IL-1β等の炎症性サイトカインが産生され、全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome:SIRS)が引き起こされる。その際、炎症性サイトカインの作用により、血管内皮細胞上に、好中球に対する接着分子であるE-セレクチンがde novoに合成、発現され、好中球の血管内皮細胞への接着、血管外への浸潤が起こることが明らかにされている。一方、外科手術が非治癒手術に終わると、転移巣が急激に広がることは診療上、時々経験することである。癌細胞上にも好中球と同様に、E-セレクチンのリガンドとなる糖鎖(CA19-9、シアリルSSEA-1等)が発現されており、外科侵襲により産生された炎症性サイトカインが血管内皮細胞にE-セレクチンを発現させると、血中に入った癌細胞の着床が促進される可能性が考えられる。そこで、癌細胞の転移における、侵襲反応および炎症性サイトカインの影響を、癌細胞上の糖鎖(CA19-9)の発現と血管内皮細胞上のE-セレクチンの発現との観点から解析した。 侵襲時に産生されるTNFαにより、血管内皮細胞上にE-セレクチンが発現され、セレクチンー糖鎖間の相互反応を介して、好中球および膵癌細胞株の血管内皮細胞への接着反応が増強した。この現象はin vivoにおける実験系においても再現された。また、この癌細胞-血管内皮細胞間の接着反応を、細胞内エラスターゼ活性が増強することが判明した。 これらの現象は、手術侵襲が血管内に入った膵癌細胞の血管内皮細胞への着床(血行性転移)を促進する可能性を示している。手術時に癌細胞の血管内への流入(病巣からの揉み出し)をできるだけ避けること(no-touch isolation)とともに、エラスターゼ活性の抑制などにより癌細胞の転移形成能を低下させる工夫が必要と考えられる。
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