研究課題/領域番号 |
10671129
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
小林 英司 自治医科大学, 医学部, 助教授 (00245044)
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研究分担者 |
細谷 好則 自治医科大学, 医学部, 助手 (30275698)
藤村 昭夫 自治医科大学, 医学部, 教授 (90156901)
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キーワード | 遺伝子治療 / 遺伝子銃 / 局所治療 / 固形癌治療 |
研究概要 |
吉田肉腫細胞1×105個/0.1ccを27G針を用いて皮下に移植して固形腫瘍を作成した。腫瘍移植後5および7日目に、遺伝子銃を用いて総量8μgの遺伝子(DNAプラスミド)を腫瘍に導入した。TNF-α単独、IL-12単独、IL-12とTNF-αの併用およびコントロール(β-gal)の4群で実験を行った(各群ともn≒10)。腫瘍の大きさを移植後3、5、7、9日目に測定し、抗腫瘍効果を腫瘍重量W=長径×短径2/2の変化として評価した。さらに遺伝子射入後の担癌ラットの生存日数を記録し、生存率で抗腫瘍効果を評価した。 腫瘍増殖抑制効果:治療開始前に4群間の腫瘍重量に統計学的有意差は認めなかった。初回遺伝子導入2日後には、腫瘍重量(平均値±SE)はコントロール、TNF-α単独、IL-12単独およびIL-12とTNF-α併用でそれぞれ、3525±537、2658±501、1444±133および1589±229mgであった。コントロールに比べ、いずれのサイトカイン遺伝子治療群とも有意に腫瘍重量の増殖を抑制した(p<0.05)。導入4日後(腫瘍細胞移植後9日目)にはそれぞれ、6424±549、3288±340、2200±353および1990±343mgとなり、さらにコントロールと治療群との差が明確になった(p<0.001)。サイトカイン遺伝子治療群間での比較ではIL-12はTNF-αに比べて増殖抑制効果が高かった(P<0.05)。またIL-12単独治療群との有意差はなかったが、IL-12とTNF-α、の併用治療が最も腫瘍増殖を抑えた。 生存率:コントロール群は、すべて9日以内に死亡した。TNF-α治療はコントロールに比べ有意に生存日数を延長させたが(p<0.01)、42日以内にすべて死亡した。IL-12単独治療はTNF-α治療より延命効果があり、さらに20%のラットが生存した。IL-12とTNF-αの併用治療で最も良好な結果が得られ、40%が長期生存した。コントロール群は、急速に増大する腫瘍と著明な腋窩のリンパ節転移および胸水により、すべて9日以内に死亡した。TNFαを射入した群では腫瘍の中心が潰瘍・壊死となっていたが消失には至らず、腋窩のリンパ節転移と胸水を認めた。IL-12単独治療、IL-12とTNFα併用治療群のなかで60日以上生存したラットでは、皮下腫瘍は肉眼的に消失した。また腋窩リンパ節転移や胸水は認められなかった。 ラット皮下腫瘍モデルで遺伝子銃によるTNF-α、IL-12遺伝子導入を行い、ともに抗腫瘍効果が得られた。単独治療では、TNF-αよりもIL-12の方が抗腫瘍効果に優れ、一部の担癌ラットを根治させた。また、TNF-αとIL-12遺伝子を併用することで、それぞれ単独よりも良好な生存率が得られた。 遺伝子銃によるサイトカイン遺伝子局所導入は、原発巣のみならず転移をも抑制する可能性があると考えられた。
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