乳癌の治療成績を向上させるには、第1に外科的切除であれ、化学療法であれ何らかの方法によりmass reductionを行うこと、また、第2にその後の再燃、再発をいかに抑制するかとの問題がある。乳癌に対するmass reductionについては大量化学療法の腫瘍抑制効果について数多くの報告がされている。しかし、何れの方法単独では生命予後の改善に至ったとの報告は数少ない。このため、本研究に関連した事項として、大量化学療法によるより効果的なmass reductionについての検討を今回の検討に含めた。HLAは、個体を識別するためにCD8細胞への抗原提示に重要な役割を果たしていると考えられている。特に癌抗原を認識するにはHLA-Class I抗原が必要とされる。このような免疫的な機序によるmicro levelでのAlloimmuno responseを応用した抗腫瘍効果を得ることを本研究の最終目標とし、これに関連した乳癌細胞のHLA-Class I抗原欠損の意義について以下の検討および報告を行った。効果的なmass reductionを目的とした化学療法に関しては、第35回癌治療学会、第25巻、第26巻の「癌と化学療法」誌上において主として、再発乳癌を対象として化学療法によるmass reduction効果の検討を行い報告した。また、Alloimmuno responseのきわめて基礎的な研究として、乳癌の組織におけるHLA-Class I抗原欠損について欠損頻度と、悪性度(p53を測定することにより推測した。)を比較検討し第36回癌治療学会に報告した。
|