研究概要 |
対象と方法: 1.小児生体部分肝移植症例9例を対象とし、移植肝吸引細胞診(Transplant Aspiration Cytology: TAC)および末梢血を経時的に採取した。モノクローナル抗体(CD4,8,25, HLA-DR)反応させ、FACSscanにてリンパ球サブセット解析を行った。2.末梢血よりtotal RNAを抽出し、RTにてcDNAを合成し、IL-2、IL-2Rに対するprimerにより、PCRを施行。mRNAレベルIL-2、IL-2Rを測定した。 結果: 1.リンパ球サブセット解析(1)CD25+細胞はmild rejectionの際に、3〜6%の増加を認めたのみであったが、拒絶反応の3日前の段階でaspirate中のCD8+DR+細胞は10%以上の増加を認めており、末梢血中のそれよりも有為に(p<0.05)高値を示した。また、CD8+DR+細胞は遷延するウイルス感染の際にも増加傾向がみられた。(2)severe rejectionを1例に認めたがDR+細胞のみならず、CD25+細胞の増加(20〜30%)がaspirationにて認められた。特にCD4+細胞において認められた。(3)non-immunological damage(血管、胆管合併症)では活性化リンパ球の増加は見られなかった。2.mRNAレベルのIL-2、IL-2Rの測定。5例の小児生体部分肝移植症例に対し、経時的に合計48回の血液サンプリングを行った。そのうち2回にIL-2Rの有意な発現が見られたが、臨床的急性拒絶反応との相関は見られなかった。なお、これらの症例では、severe rejecitonっは経験しなかった。 まとめ: 術後の免疫学的モニタリングとして移植肝および末梢血のリンパ球サブセット解析を経時的に検討することにより、グラフト機能をより詳細に把握することが可能であると考えられた。
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