研究概要 |
本研究の平成10年度の目標はサイトメガロウイルス(CMV)再活性における一酸化窒素(NitricOxide,NO)の役割を明らかにすることである。平成10年度は交付申請書に記載した研究計画に沿って実験を行った。即ち、(C3H/HexBALB/c)F1マウスにmurine CMV (MCMV)を0.2LD_<50>接種し、このマウスにBALB/cマウスの脾細胞を静注することによりGVHを誘導させる実験系を用い、以下の結果を得た。 1. GVH誘導後経時的に唾液腺・肺・脾臓・肝臓・心臓よりDNAを抽出しPCR法にてMCMVのウイルスDNAの有無を調べた。その結果、GVH誘導前には認められなかったMCMVのゲノムDNAがGVHの進展とともに、肺汲び心臓にて認められるようになった。即ち、GVH反応が潜伏MCMVのウイルスDNA量を増加させることが明らかになった。しかし、このMCMVゲノムが認められた肺・心臓よりRNAを抽出し、RT-PCR法にてウイルスのmRNAの発現を調べたところ、発現は認められなかった。即ち、ウイルスゲノム量はGVHにより増加しているが、MCMVの再活性、複製には至っていないことがわかった。 2. GVH誘導後に肺・心臓よりRNAを抽出し、誘導性NO合成酵素(iNOS)-mRNAの発現を調べたところ、GVHによりこれらの臓器でのiNOSのmRNAが発現しており、GVHの進展に伴い、NOが産生されることが示された。 3. GVH誘導と同時にNO阻害剤であるphorbol-butyl-nitrone(PBN)を投与したところ、肺、心臓ではMCMVのDNAは認められなくなった。また、GVH誘導と同時にiNOSの基質であるアルギニンを投与したところ非投与群に比べより大量のMCMV-DNAが出現するようになった。 以上のことから、GVHなどの宿主の免疫反応に伴い産生されるNOにより、潜伏CMVのDNA量が増加することが判った。しかし、このDNAはRNAへは転写されず、ウイルスの複製には次のステップが必要であると考えられた。以上の結果を基にした論文を作成し、現在英文誌に投稿中である。平成11年度にはこれをiNOS遺伝子欠損マウスを用いて確認する予定であり、現在iNOS欠損マウス、及びその対照マウスである(C57BLxSv129)F1マウスにCMVを感染させ、予備実験を遂行中である。
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