移植後のCMV間質性肺炎の成立までの過程を今までの実験結果から我々は以下のように考えている。 1.拒絶反応やGvH反応により誘導されたnitric oxide(NO)により潜伏CMVが再活性化される。 2.再活性化したCMVにより宿主T細胞がprimeされる。 3.primeされたレシピエントのT細胞が二次刺激されると過剰のサイトカインを放出され、これが誘導性NO合成酵素(iNOS)を誘導し、産生されたNOが肺組織障害を惹起する。 平成10、11年度はこの仮説の証明を目的として実験を行い、以下の結果を得た。 上記1に関する研究:(C3H/He x BALB/c)F1マウスにmurine CMV(MCMV)を0.2LD_<50>接種し、このマウスのBALB/cマウスの脾細胞をを静注し、GVHを誘導させると、GVH誘導前には認められなかった。MCMVのゲノムDNAがGVHの進展とともに、NO依存性に肺及び心臓にて検出されるようになった。しかし、このDNAからRNAへの転写は認められず、MCMVの再活性、複製には至っていないことがわかった。現在、NOと潜伏感染の関係を調べる目的でiNOS遺伝子欠損マウスを用いてMCMV潜伏モデルを作成中である。 上記2に関する研究:MCMV感染BALB/cマウス脾T細胞を試験管内で抗CD3抗体で刺激し、実験を行った。その結果MCMV感染マウスT細胞表面では刺激後活性化マーカーは非感染マウスT細胞と同様に発現するが、termination markerの発現はみられなかった。即ち、CMVによるレシピエントのT細胞のprimeはT細胞をアクティブに活性化するのではなく、T細胞の活性化シグナルが終息するのを妨げることによる事が明らかになった。現在、このシグナル伝達異常とT細胞Vβとの関係を検討中である。 上記3に関する研究:(C57BL/6 x Sv129)F1マウス(F1マウス)にマウスCMV(MCMV)を0.2LD_<50>接種し、感染4週後に抗CD3抗体を投与した。その結果F1マウスでは肺炎が惹起され、主病変部は細気管支上皮細胞であり、その気管支上皮細胞の蛋白のチロシン残基はニトロ化されていた。一方、iNOS遺伝子欠損マウスではこのゆな肺病変は全く見られずCMV肺炎がNOによるものであり、その標的が細気管支上皮細胞であることを観察した。
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