今回、我々は、食道癌より同定された細胞障害性T細胞が認識する癌退縮抗原遺伝子SART-1とそれがコードする2つのタンパクSART-1_<800>、SART-1_<259>の発現を乳癌において遺伝子レベルとタンパクレベルで検討した。遺伝子レベルでは、正常乳房組織を含む調べられた全ての乳癌組織、乳癌細胞株に発現していた。タンパクレベルでは、SART-1_<800>が40%の乳癌組織と全ての乳癌細胞株で発現しており正常乳房組織ではその発現はみられなかった。SART-1_<259>の発現は、乳癌において確認されなかったが、HLA-2601またはHLA-2402をトランスフェクトされ、それぞれの発現が確認された乳癌のうちSART-1_<800>を発現している乳癌がそれぞれのHLAに拘束されるHLA拘束性細胞障害性T細胞によって認識されたことは、乳癌の治療においてホルモン療法に加わる特異免疫療法という新しい可能性を示唆した。また、Estrogen receptorとProgesteron receptorの発現とSART-1_<800>の発現について解析した。今回解析した試料の陽生率は、Estrogen receptorが56%、Progesteronが42%であった。Estrogen receptorとSART-1_<800>が共に発現していた症例は18%、SART-1_<800>のみが22%、Estrogen receptorのみが38%、および両者とも陰性が22%でした。Progesteron receptorについても同様の結果を得た。
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