研究概要 |
(1)in vitroにおいて、F344ラット由来の乳癌細胞株(RT1A^1)にRT1A^a抗原遺伝子をセンス方向に組み込んだプラスミドベクターをリボフェクチン法により遺伝子導入した。腫瘍細胞におけるRT1A^a抗原の発現をフローサイトメトリーで確認後、F344ラットの脾細胞をエフェクターとして細胞障害活性を測定。また、F344ラット背部皮下に腫瘍細胞を移植し、腫瘍径1cmの時点から,1,3,5日目にpcMRT1Aを腫瘍内局注+electroporation法により遺伝子導入し、腫瘍径及び生存日数を検討した。 (結果)in vitroにおいて、腫瘍細胞のRT1A^a抗原の発現により、細胞障害活性が有意に上昇した。また,in vivoの実験では,electroporation法を用いたアロ抗原導入群は無処置群に比べて腫瘍の増殖は抑制され、生存期間の有意な延長をみた。 (2)ドナーPVG.R8ラット(RT1A.A^aB^uD^uC^u)の大動脈内皮培養細胞にRT1A^a抗原遺伝子をアンチセンス方向に組み込んだプラスミドベクターを遺伝子導入した後、腫瘍細胞におけるRT1A^a抗原の発現をフローサイトメトリーで評価後、レシピエントPVG.1U(RT1A.A^uB^uD^uC^u)ラットの脾細胞をeffectorとして細胞障害活性を測定した。 (結果)アンチセンス遺伝子導入後のドナー細胞のRT1A^a抗原発現は30%抑制されたものの細胞障害活性は、無処置ドナー細胞に比し、軽度の低下を認めるのみであった。 (まとめ)悪性腫瘍内に直接アロMHC遺伝子を導入する免疫療法は抗腫瘍効果を惹起した。一方、移植片拒絶反応の抑制には、その標的抗原であるMHC抗原の発現をほぼ完全に抑制することが必要であり、より効率のよい遺伝子導入が必要と考えられた。
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