研究概要 |
潰瘍性大腸炎の癌・dysplasia・腺腫におけるp53蛋白過剰発現の頻度について,東京大学第1外科実験室にて行った.p53蛋白発現の検討には抗p53蛋白モノクローナル抗体PAb1801(Oncogene Science,200倍希釈)を用い,自然乾燥後,micro-wave処理した薄切切片に,SAB法にて行った.p53免疫染色結果は,以下の4つ,びまん性陽性・diffuse(+++):陽性細胞が病変全体にびまん性にみられるもの(400倍視野で最低30%,ほとんどの場合70-80%以上),集簇性陽性・nested(++):病変の一部にp53陽性細胞が連続性に集合して,巣状集簇性に出現しているもの,散在性陽性・scattered(+):散在性にみられるもの,陰性・negative(-):陽性細胞が全くみられないもの,に分類した.p53蛋白過剰発現は,筆者らの今までの成績に従って,びまん性陽性または集簇性陽性のものとした.この結果,p53蛋白過剰発現は,浸潤癌で89%,high-grade dysplasiaで70%,low-grade dysplasiaで57%,腺腫では0%,indefinite for dysplasiaで0%,negative for dysplasiaで0%であった.腫瘍の診断,およびdysplasiaと腺腫の鑑別にp53蛋白過剰発現を検討することが大変役立つことが証明され,これを日本大腸肛門病会誌(『潰瘍性大腸炎癌化例の診断におけるp53染色』51巻,1101-1108,1998)に投稿し,評価を得た.
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