潰瘍性大腸炎の癌、dysplasia、腺腫におけるp53蛋白過剰発現の頻度について東京大学第一外科にて検討した。p53蛋白過剰発現にはp53モノクローナル抗体PAb1801(Oncogene Science)を用い自然乾燥後、SAB法にて行った。p53免疫染色結果は、びまん性陽性 diffuse(+++)集簇性陽性 nested(++)散在性陽性 scattered(+)陰性negative(-)に分類した。p53蛋白過剰発現はびまん性陽性のものと集簇性陽性のものとした。この結果p53蛋白過剰発現は、浸潤癌で89%、high-grade dysplasiaで70%、Low-grade dysplasiaで57%、腺腫では0%であった。dysplasiaと腺腫との識別にp53蛋白発現は役立ち、これを臨床の場で応用し、多くの早期腫瘍を診断し、治療に役立てている。更に発癌に関する詳細な機序を明らかにするため、APC遺伝子の存在する5番染色体長腕とp53遺伝子の存在する17番染色体短腕の欠失(LOH)をそれぞれD5S346及びTP53のマーカーを用いて検索中である。
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