大腸癌およびdysplasia(DS)における遺伝子変異を明らかにすることを目的とした。癌およびDSについて、5番染色体長腕、17番染色体短腕、さらに8番、18番、22番染色体の欠失(LOH)およびMSI(Microsatellite Instability)を検討した。LOHの頻度は、5番染色体長腕36%(4/11)、17番染色体短腕67%(8/12)、8番染色体短腕59%(10/17)、18番染色体長腕0%(0/3)、22番染色体長腕0%(0/3)に認められた。MSIは17病変何れにも認められなかった。以上の結果から、潰瘍性大腸炎合併大腸癌およびDSでは、17番染色体短腕および8番染色体短腕のLOHの頻度が高く認められ、17番染色体短腕のLOHからは、潰瘍性大腸炎合併大腸腫瘍において、腫瘍形成にp53遺伝子が関与している可能性が考えられた。癌、DSともにMSIを呈した病変は存在せず、潰瘍性大腸炎の腫瘍形成においてMSIが関与している可能性は高くないものと考えられた。次に、潰瘍性大腸炎の癌、DS、腺腫における免疫染色による、p53蛋白過剰発現の頻度については、p53蛋白過剰発現は、浸潤癌で89%、high-grade DSで70%、Low-grade DSで57%、腺腫では0%であった。DSと腺腫との識別にp53蛋白発現解析を用いることにより、臨床上、早期腫瘍の診断および治療上応用可能であることが示された。
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