【目的】ミトコンドリアDNAの複製と転写を制御する転写因子NRF-1の遺伝子を肝細胞に遺伝子導入することによって、肝エネルギー産生を人為的に上昇させ大量肝切除術後の残肝再生を促進させることができるか検討する。 【研究概要】1.NRF-1のcDNA作成:正常肝組織から総RNAを抽出した後、既知のMRF-1の塩基配列から増幅に最適なプライマーをコンピューター検索により決定してRT-PCR法にて必要なcDNAを増幅した。NRF-1のCDSは119〜1630であり、1度のRT-PCRで得るには長すぎたため、119〜780、460〜1630の2回に分けて行ったのちライゲーションさせた。得られたcDNAはシークエンスを確認した後、強力なCAGプロモーターをもつpCAGGSにいれた。2.in vivoでの導入に用いるHVJリポソームの導入効率を調べるため、β-galactosidase遺伝子を情報遺伝子として、7週令のラットに投与した。投与方法は、(1)陰茎静脈より全身投与、(2)経門脈的に全肝投与、(3)経門脈的に片葉に投与し肝血行遮断15分、(4)肝被膜下に直接投与、の4方法を試みた。導入から3日後にラットを屠殺し、肝組織をX-Gal染色して導入効率を検討したところ(1)(2)では肝細胞への導入効率はきわめて悪く、(3)(4)では比較的良好な導入効率を得た。今後、HVJリポソームを用いてNRF-1遺伝子の導入を行う際には、遺伝子リポソーム調整液を肝組織にできるだけ停滞させる必要性が示唆された。 【今後の展望】1.平成10年度に作成したcDNAを用いて肝癌由来のcell lineにリポフェクタミン法にて遺伝子導入する。NRF-1mRNA、ミトコンドリアDNA及びミトコンドリアmRNA、cytochromebのmRNAを定時的に定量をし、NRF-1遺伝子導入による細胞増殖効果を検討する。2.ラット肝切除後肝不全モデルを作成しHVJリポソームを用いてNRF-1遺伝子を残肝に導入する。上記の各因子を定量測定し、治療効果を検討する。
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