特徴的な病態を示すPeutz-Jeghers syndrome(以下PJSと省略)の発症機序を明らかにすることは複数の臓器における腫瘍発生のメカニズム解明につながると考え、原因遺伝子をポジショナルクローニング法により単離、同定することを目的に研究を行って来た。しかしながら1998年はじめ、HemminkiらによってPJS原因遺伝子STK11/LKB1が単離され、我々の研究も疾患の診断、予防や早期発見への応用を考え、遺伝子診断を目的とした。 PJS原因遺伝子として単離されたSTK11/LKB1の蛋白質翻訳領域についてPCR-SSCP法およびsequence法によりPJS患者、計17家系65人について変異の有無を検索した。12家系において13の変異が確認され、変異の同定された家系については、家系内のPJS患者全員に同一の変異が確認された。5家系については蛋白質翻訳領域に変異を同定できなかった。これらについては非翻訳領域についての検討を行う必要があると考える。13の変異の内訳は、7家系については蛋白の合成が中断する変異であり、STK11/LKB1遺伝子の不活性化が腫瘍発生にかかわっていると考えられた。2家系についてはミスセンス変異、3家系についてはエクソン/イントロンジャンクション近傍の変異のよるスプライシングの異常が示唆され、1家系については1アミノ酸の欠失(インフレーム)であった。 また、エクソン6では6例において遺伝子変異が認められ、キナーゼ活性中心の一部であるこの領域が、遺伝子変異のホットスポットであることが示唆された。この6例中3例においては単一塩基:シトシンの連なった箇所の挿入または欠失による変異であり、DNA-slippeageによるものと考えられた。今後、変異の種類と病態との比較検討を行う必要があると思われる。
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