研究概要 |
1.リンパ液中サイトカイン産生量 IL-6は、4時間後より有意に上昇し、中等症群では6-8hrに、重症群では4-6hrにピークを認めた。しかし、腹膜炎の重症度との間には有意差はなかった。TNF-αは、重症群では2-4hrで有意に上昇を認めたが、中等症群では上昇しなかった。TNF-αは重症度による排出量の差を認めたが、8-10時間になると、両群の間に有意差を認めなかった。IL-10は、中等症群はコントロール群と有意差を認めなかったが、重症群は2時間後より有意な上昇を認め、そのピークは10時間以降にあるものと考えられた。 2.10時間後のリンパ液中と血清中サイトカイン濃度の比較 IL-6濃度は中等症群、重症群とも有意にリンパ液中濃度が血清中濃度より高かった(中等症群;17812.0±1948.1pg/ml,vs.1187.3±319.0pg/ml,p<0.0001、重症群;23947.2±1773.8pg/ml,vs.6602.7±2021.4pg/ml,p<0.0001)。IL-10は中等症群では有意差を認めなかったが、重症群ではリンパ液中濃度が有意に高値を示した(714.6±124.0pg/ml,vs.38.6±5.9pg/ml,p<0.0001)。TNF-αは、両群ともリンパ液中濃度が高い傾向は認めたが有意差はなかった。 以上より腸管は炎症性サイトカインのみでなく、抗炎症性サイトカインの重要な産生臓器であることが推察された。また、腸管で産生されたサイトカインの全身への経路として、リンパ管は非常に重要な役割を演じていることが推察された。 今後は、他の病態における腸管からのサイトカイン産生について検討を重ね、重症感染患者における腸管の役割など、更に研究を進めていく予定である。
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