研究概要 |
本年度は研究計画にのっとり以下の4点を中心に研究してきた。1)胆嚢癌細胞GB-d1へのP21及びp53遺伝子導入の証明:ウェスタンブロッティングにてp21遺伝子導入群におけるp21タンパクの発現とp53遺伝子導入群におけるp21の発現を伴うp53タンパクの過剰発現を認めた。2)GB-d1へのp21及びp53遺伝子導入のin vitroにおける増殖抑制効果及び死細胞率の増加:24well plateに50000/wellの細胞をまき48時間後に115840になった時点でp21及びp53遺伝子組換えアデノウイルスをmoi 100で感染させ遺伝子を導入し経時的に細胞数を測定した。感染3日後にはそれぞれ107640,107440となり無感染群の396000やコントロールウイルス感染群の264400と比較して有意に増殖を抑制した。同様な感染後,プロピディウムアイオダイドで細胞を染色しmultiple well plate readerを用いて蛍光光度を解析し死細胞率を経時的に測定した。感染3日後にはp21遺伝子導入群では18%,p53遺伝子導入群では24%と著明な死細胞率の増加を認めた。3)GB-d1へのp21及びp53遺伝子導入による細胞周期の変動:感染2日後のフローサイトメトリーによる細胞周期の解析において,p21遺伝子導入群では細胞周期のG1期停止を,p53遺伝子導入群ではsubGl領域の出現すなわちアポトーシスを認めた。4)GB-d1へのp21及びp53遺伝子導入によるテロメラーゼ及びTERTに対する影響:細胞1000個あたりのテロメラーゼ活性をTRAP法にて測定したところ,p21遺伝子導入群ではほとんど変化は無かったが,p53遺伝子導入群においては感染2日後で感染前の48%に,感染3日後には完全に抑制した。またテロメラーゼの触媒サブユニットでテロメラーゼ活性と相関があるTERTのメッセンジャーRNAをRT-PCRで測定し、p53遺伝子導入はTERTの発現を感染2日後に抑制することを認めた。以上より胆嚢癌に対するp21及びp53遺伝子治療は有効であると考え,またp53はテロメラーゼを抑制する因子の1つであることが示唆された。現在in vivoにおける研究を進めている。
|