研究概要 |
【目的】膵移植片モデルを作成し、乳頭括約筋(SO)運動に及ぼす影響について調べた。【方法】イヌを用いて膵及び十二指腸第1、2部を神経郭清し、胃十二指腸動静脈のみの血流支配とした遊離膵十二指腸片を作成し移植片モデルとした。これを空腸に端側で吻合し、乳頭括約筋の対側に内圧測定用のトーマスカニューラを植えた。空腹期の乳頭括約筋運動を低圧潅流内圧法で測定し、血中モチリン濃度との関係を調べた。さらにコレシストキニン(CCK)に対するSOの反応を調べた。トーマスカニューラのみ植えたイヌをコントロールとした。【結果】正常犬でSOは十二指腸の伝搬性強収縮波群(MMC)と協調運動を示すが、移植片モデルではMMCは消失し、短周期の周期的運動を示した。この周期運動は血中モチリン濃度と相関関係があった。正常犬と比較し移植片モデルではSOの平均基礎圧(9.5±0.9vs.16.2±1.1mmHg,p=0.002)、平均収縮波圧(63.9±5.2vs142.8±9.8mmHg,p<0.001)は上昇し、motility in dex(integral of pressure per minute)も増加した(992±45vs.2125±208mmHg/min,p<0.001)。CCKに対し正常のSOでは基礎圧が下がるが、移植片モデルのSOではparadoxical responseが出現し、基礎圧は上昇した。【総括】膵十二指腸領域神経郭清により空腹期のSOの基礎圧及び運動能は上昇した。またCCKによるparadoxical responseは膵液排出を促進した状態で乳頭括約筋の抵抗を増すことになり、この結果、脾管圧上昇、膵の線維化、膵機能障害を来すことが予想される。実際の膵移植でも乳頭括約筋機能異常による膵炎から移植片機能不全が起こっている可能性がある。
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