本研究では、銅欠乏食-常食飼育後にラット膵に出現したのhepatocyte-like cellのなかに胆汁生成において重要な胆汁酸代謝の存在を明らかにすることを目的とした。 実験にはFisher344ラットのオス(体重80-90g)を用い銅欠乏食(0.3to0.4mg of Cu/g diet)にて8週間飼育した後、常食(6.5to8.0mg of Cu/g diet)に変更し、さらに8週間して銅欠乏食-常食飼育ラットを作製した。 cholesterol7α-hydroxylase(C7αH)およびΔ^4 -3-ketosteroid5β-reductaseは胆汁酸合成に関わる肝特異酵素であり、特にC7αHは胆汁酸合成の律速酵素である。銅欠乏食で飼育したラット膵のtotal RNAを調整しreverse transcriptase polymerase法でラット膵における両酵素のmRNAの発現を調べた結果、銅欠乏食開始時には両酵素とも発現を認めないが、銅欠乏食8週目から両酵素の発現を認め、常食に戻してからも経時的に両酵素のmRNAの発現量が増加した。これは組織学的にhepatocyte-like cellが形成され次第に成長してゆく過程と一致した。またC7αHは正常の肝細胞では酵素活性およびmRNAの発現に日内変動リズムを証明されているが、hepatocyte-like cellにおいても同様にmRNA発現に日内変動が存在することをcompetitive polymerase chain reaction法を用いて同酵素のmRNAの発現量を定量化することで証明した。 以上の実験結果から、膵のhepatocyte-like cellは肝細胞と同様に胆汁酸代謝機能を有していてhepatocyte-leke cellが形態学的に成長するのに一致し鮮明になった。このようにhepatocyte-like cellは胆汁を生成している可能性が示唆された。
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