研究概要 |
前年度に引き続きヒト胃癌細胞株AZ521を用い,腹膜に高率に転移する細胞株AZ-P7aとリンパ節に高率に転移するAZL5Gを樹立し,それぞれの細胞株を用いて検討した。 AZ521から腹腔に高率に転移する細胞株AZ-P7aを樹立した。AZ521の腹膜転移率は2/6(33.3%)であるのに対し,AZ-P7aの腹膜転移率は11/14(78.6%)であった。AZ521に比較してAZ-P7aは高い運動能を持っていた。AZ-P7aのFACSによる細胞生物学的特徴はAZ521と比較し,integrins α2,α3,α5,α6,αvβ5は強く発現していた。しかしα1,α4,αVβ3,hCD44H,hCD44v3,hCD44v6,hCD44v10に関しては両細胞株に有意差はなく,弱い発現であった。またAZ-P7aをヌードマウスの脾臓に接種する方法で血行性転移を見ると,AZ-P7aには肝転移を認めなかった。同様の方法でAZ521からリンパ節に高率に転移する細胞株AZL5Gを樹立した。親株であるAZ521の腹膜転移率は33.3%であるのに対し,AZL5Gの腹膜転移率は85.0%であった。AZ521に比較してAZL5Gは高い運動能を持っていた。その細胞生物学的特性についても検討すると,AZL5GはAZ521に比較してintegrinsα1,α2に関して有意に強く発現していた。一方αvβ3,E-cadherin,ICAM-1,hCD44Hに関しては両細胞株に有意差はなく,弱い発現であった。このように血行性転移と腹膜転移およびリンパ節転移のメカニズムは異なることが示唆された。今後細胞株を用いて転移のメカニズムを解明し,胃癌の新しい治療法を確立したい。
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