研究概要 |
本研究では剖出法により、肝後区域を中心とした右葉上部の静脈を、肝内門脈枝との位置的関係から分類を試みた。また、分類の妥当性を導くため、血管径計測から統計処理によって各静脈の相互関係も検討した。 <方法と材料> 肝剖出標本から門脈後上枝(P7)と門脈前上枝(P8)が明瞭な53例について血管径計測を行い、特定血管の果たす生理的役割(血流量)をハーゲン-ポアズイユの法則から、半径の4乗値について連続した変数の相関係数をpearsonの式に従って求めた。特に後区域のドレナージに重要と思われる短肝静脈(IRHV,MRHV以下SHV)について、P7と門脈後下枝(P6)が明瞭にな85例について同様に検討した。 <結果> 右葉上部の静脈は以下の6群に定義できた。a(SHV):P7の背側を走行(SHV7:後上区域(S7)のみドレナージ、SHV6:後下区域(S6)のみドレナージ、SHV6/7:S6とS7をドレナージ)。b:P7の腹側を走行。c(RHV):P7とP8末梢間を走行、根部をRHV root、bやdの各静脈根流入部より末梢をProper RHVと定義。d: P8の背側を走行。e:P8腹側枝と背側枝間を走行、f:P8腹側枝の腹側を走行。aは全て下大静脈(IVC)に流入し、90%以上がS7のドレナージに関与し、SHV6/7のみRHV rootの直径と負の相関にあった。bは88%に存在しaと負の相関にあった。dは90%に存在し、bと同時に発達する傾向にあった。b、dともに全てRHVに流入した。eは89%に存在しP8やdと正の相関にあり,流入部位はIVC、RHV、中肝静脈(MHV)と様々であった。fは38%に認めるのみで全て中肝静脈に流入し、eと負の相関にあった。 <結語>右葉上部の静脈を門脈枝との位置的関係で6群に定義できた。また,SHVはS7を主体にレナージしていた。
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