研究概要 |
ヒト胃癌細胞由来高転移性株の樹立 低転移性ヒト胃癌細胞株AZ521をヌードマウスの胃壁内に同所性に移植し、6週間後に犠死せしめ、わずかに認められた肝転移巣とリンパ節転移巣を摘出した。それらの転移癌細胞の単細胞培養を行い、再度マウスの胃壁内に移植する操作を繰り返し、高リンパ節転移性株AZL5Gと高肝転移性株AZH5Gを樹立した。各細胞株におけるリンパ節転移形成率は、親株AZ521で25%(5/20)、AZL5Gで85.0%(17/20)、AZH5Gで5.0%(1/20)、肝転移形成率はAZ521で15%(3/20)、AZL5Gで5%(1/20)、AZH5Gで87.5%(7/8)であり、AZL5GとAZH5Gはそれぞれリンパ節転移と肝転移を選択的に生じる高転移性株であると考えられた。一方、AZ521の同所移植モデルにおいては腹膜転移が全く認められず、同株由来の高腹膜転移性株の樹立は困難であった。また、AZ521以外のヒト胃癌細胞株を用いた同様の実験では、MKN-7とMKN-28については全く転移巣の形成を認めず、これらの細胞株に由来する高転移性株の樹立は困難であると結論された。MKN-45については、リンパ節転移と浸潤硬化型の腹膜播腫巣の形成が見られたが、肝転移は認めなかった。 高転移性株AZL5GとAZH5Gの特性解析(親株との比較) AZL5GとAZH5Gはともに細胞運動能と増殖能が親株AZ521よりも有意に亢進していた。細胞接着分子の発現をみると、両高転移性細胞株ともにVLA-1,VLA-2,VLA-3,VLA-5の発現が増強していた。細胞外基質タンパクに対する接着能をみると、AZL5GGではtype-4 collagenとfibronectinに対する接着活性が有意に亢進しており、AZH5Gではfibronectinに対する接着活性の亢進およびlamininへの接着活性の低下が見られた。
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