研究概要 |
1992年から1996年まで教室で大腸癌肝転移に対して抗癌剤(5-FU)の肝動注を行った症例75例に対し,原発巣のホルマリン封埋標本を用い,変異型p53の発現とその間連遺伝子であるp21/waf1の発現を免疫染色(ABC法)を用い検索し,以下の事柄を明らかにした. 1. 原発巣,肝転移巣の染色率はp53がそれぞれ48%,46.7%で,p21/waf1は38.7%と30.7%であった.また原発巣と転移巣で発現が一致する率はp53が90.7%で,p21も81.3%となっており,ともに原発巣と転移巣で発現が一致する傾向を認めた. 2. p53とp21の発現との間には原発巣と転移巣でともに明らかな相関を認めた. 3. 原発巣の染色別の残肝無再発率を検討では,肝動注施行例において累積5年無再発率はp53陰性例で81.7%,p53陽性例で67%となっており,陰性例で良好である傾向があった.p21/waf1においては,陰性例で40.1%,陽性例で82.6%となっており,陽性例で良好である傾向があったが,いずれも有意差はなかった. 4. p53とp21/waf1の染色と残肝無再発率の関係を検討した.肝動注非施行群では,P53が陰性でp21が陽性であった症例とP53が陽性でp21が陰性であった症例に残肝再発率に有意差をは認めなかったが,肝動注施行群では,P53陰性およびp21陽性症例が有意に残肝再発が低い傾向があり,肝動注の効果を反映していると考えられた. 以上の成果を第52回および第53回日本消化器外科学会にて発表した.現在論文作成中である.
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