背景:クローン病は再燃を繰り返しながら徐々に狭窄や瘻孔を形成する難治性炎症性腸疾患で、腸切除の再発は少なくない。再発危険因子として手術適応が挙げられ、瘻孔型(遊離穿孔、膿瘍、慢性瘻孔)が非瘻孔型(狭窄、出血など)に比べて有意に再手術率が高いとの指摘がある。また、クローン病腸管壁のコラーゲン分画が健常人と異なると考えられている。 目的:クローン病の腸管壁のコラーゲンのタイプ分析を行ってクローン病と対照群を比較して本症の特徴を明らかにし、クローン病腸切除後再発とコラーゲン分画との関連を検討するためクローン病の瘻孔と瘻孔以外の病変の差を検討した。 対象・方法:対象群12例とクローン病の病変別に肉眼的正常部48例、狭窄部10例、潰瘍部20例、瘻孔部21例、肥厚部11例、浮腫を認める部位3例の腸管壁についてコラーゲン分画(%)(type I、III、V)を測定した。各群間の比較はt検定で行い、P<0.05を有意差ありとした。 結果: 1)Type I、III:対照群とクローン病全体、及び各病変群とで差はなく、またクローン病各群間にも差は見られなかった。 2)Type V:平均含有率は対照群10%、クローン病の肉眼的正常部8.5%、狭窄部7.1%、潰瘍部8.3%、瘻孔部7.97%、肥厚部6.9%、浮腫を認める部位7.9%であった。対照群とクローン病全体、及び各病変群のtype V含有率は対照群に比べて有意に低値であった。瘻孔と非瘻孔部(狭窄部、潰瘍部、肥厚部、浮腫)のtype V平均含有率はそれぞれ7.97%、7.66%で有意差は認めなかった。 結語:クローン病の腸管壁は肉眼的正常部も含めて正常対照群と比べてコラーゲン分画のうち、type Vが有意に減少しており、この結果は従来の報告とは異なるが、クローン病患者腸管のコラーゲン代謝が正常と異なることが示された。術後再発に関与すると考えられる腸管病変の形態とコラーゲン分画に差がなかったことから、病変腸管局所のコラーゲン分画は術後再発の有無に関与しないと考えられた。今回の結果からは今後更に測定症例を増やして各病変部のコラーゲン分画の特徴を分析し、クローン病腸管の病態を解明及び術後再発との関連を検討する必要があると考えられる。
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