1.10個の食道扁平上皮癌、6個の胃癌、2個の乳癌の培養細胞株でPTENの翻訳領域における差異の有無をdirect-sequenceにより解析した。また、mRNAあるいはPTEN蛋白の発現をNorthern blotあるいはWestern blotにて解析した。胃癌の1個の株でPosphatase domainにmissense mutationをみた。構造異常は確認されないもののmRNAの発現していない細胞株が乳癌および胃癌で各々1個ずつあった。これらのCell lineではpromoter領域のhypermethylationによるmRNAの発現低下が確認された。また、PTENの不活化の生じているCell lineではAktの発現亢進があり、両者の関連が示唆された。以上よりPTENの不活化にはPhosphatase domainの変異以外にもmethylationの影響があると考えられた。 2.胃がん(10例)、乳がん(10例)のprimary carcinomaでLaser capture microdissection systemにて、がん細胞をselectiveに採取し、PTENおよびAktのmRNAのABI7700によりreal-time quantitative PCRで解析したところ、scirrhous carcinomaの浸潤部でPTENの発現減弱をみた。PTENの発現が低下している例では、Aktの発現も低下していた。免疫染色でも同様の結果であった。これらの症例はいずれもscirrhous typeのcarcinomaであった。とくに胃癌のSignet-ring cell carcinomaではPTENの発現減弱が著明であった。PTENのチロシンリン酸化機構は、scirrhous typeのcarcinoma cellのsurvivalに関連し、この種のがんでのapoptosisの回避に重要な役割を担っている可能性が考えられた。
|