研究概要 |
CA19-9抗原は大腸癌の進展に伴い癌組織及び癌患者血清中に出現する癌関連糖鎖抗原としてよく知られ,大腸癌の肝転移や予後と関連することが報告されている.しかし糖鎖抗原の細胞生物学的意義は明らかでない.われわれは動物実験モデルを用いて大腸癌肝転移における本抗原の意義を検討することを目的とした.まず各種大腸癌株におけるCA19-9抗原の発現,本抗原の合成に関わる各種糖転移酵素の発現を検索した.CA19-9抗原(シアリルルイスA抗原)の合成にはルイス酵素,α2,3シアル酸転移酵素,β1,3ガラクトース転移酵素などが必須であるが,このうち各種細胞株におけるβ1,3ガラクトース転移酵素活性はCA19-9抗原量とよく相関した.しかし,すでに報告されているβ1,3ガラクトース転移酵素群は大腸癌において発現しておらず,大腸癌におけるCA19-9抗原の合成には未知のガラクトース転移酵素が関与しているものと考えられた.そこですでに報告されている酵素群のアミノ酸配列をもとに,新しいガラクトース転移酵素をクローニングした.この遺伝子をCA19-9抗原陰性株HCT-15に遺伝子導入するとCA19-9抗原の発現か認められた.今後,この遺伝子とマウス実験モデルを用いてCA19-9抗原と癌の増殖・浸潤能,転移能との関連性について検討してゆく.
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