研究概要 |
【肝不全モデル動物の作製】ラット腹腔内にthioacetamide(200mg/kg)を週3回5週間投与し肝障害ラットを作製した.次にこれらラットに対し84%肝切除を施行し肝切除後肝不全モデルとした.本モデルの肝切除直後,2,12,24,48時間後,7日後にラットを犠死させ,以下の項目を検討中である.対照群として肝切除を施行しないsham群をそれぞれに設定した.【HGFおよびそのレセプター発現】血清および残肝組織中のHGF量をELISA法により測定した.HGFのレセプターであるc-Metの遺伝子発現状況をwestern blotにて検討した.術後肝不全モデルにおいてはHGFは種々のレベルで高発現を示した.【MAP kinase活性】Dayらの方法に準じ,残肝組織のMAP kinaseのアッセイを施行した.残肝組織のMAP kinase活性は上昇傾向だが,なお解析が必要と考えている.【Rhoを介する経路の障害の有無】Rhoを介するシグナル障害の解析は現在検討中である.【生理学的パラメータの測定】残肝組織血流(酸素分圧),energy charge(動脈血中ケトン体比)を測定した.肝組織血流は肝切除直後より増加し,徐々に低下する傾向を認めた.一方,酸素供給もこれに伴い上昇する可能性が示されたが,一定の傾向を示すまでには至らなかった.動脈血中ケトン体比には一定の傾向を認めなかった.【残肝組織の形態学的検索】摘出残肝の形態的変化を光顕で観察中である. 今後,シグナル伝達経路の障害部位が同定された場合には,さらにその上流の障害部位の同定(Ras,cdc42など)を行なう予定である.
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