胃癌に対する拡大リンパ節郭清術は、生命予後の向上をもたらしているが、術後にはしばしば重度の下痢をきたし、患者のQOLを低下させることが問題となっている。このような術後障害の発生には、胃切除により貯留能が欠如し摂取した食物が小腸内へと急速に流入すること、拡大リンパ節郭清術により腸管への外来神経支配が断たれ腸管機能異常を来すこと、などが関係している考えられている。機序の解明については、腸管への外来神経支配を断った自家小腸移植犬を作成し、外来神経切除による腸管運動異常の発現について検討した。外来神経支配の断たれた腸管では空腹期、食後期ともに運動量の増加がみられ、このような運動亢進により腸管内容の移送が促進することが胃癌に対する拡大リンパ節郭清術後の下痢の発生要因になると考えられた。また、治療面では、胃癌に対して拡大リンパ節郭清術を施行し重度の術後障害により著しいQOLの低下を来した術後患者において、内視鏡的に栄養瘻を造設し、経腸栄養を行ったところ糖吸収能の増加、小腸通過時間の著しい短縮の改善とともに血中PYY濃度の増加がみられ消化管ホルモンによる代償の機構が術後障害の軽減に役立っていることが示唆された。
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