研究概要 |
1) 抗hMLH1モノクローナル抗体の作製 hMLH1遺伝子のcodon521から752までをコードする発現プラスミドを構築し,大腸菌にて蛋白を発現させ精製した.この精製蛋白を抗原としてモノクローナル抗体を作製した.得られた抗体の評価を行ったところ,2種の抗体が各種免疫検出法に利用可能であった. 2) MSI腫瘍の検索 散発性大腸癌手術検体を用いたミスマッチ蛋白発現異常の検索のため,それら検体のMSI statusを検討した.検討の結果locus markerはAFM093xh3,BAT40,Mfd27およびBAT26の4種を用い,必要に応じてさらにMfd47,52H10,JG4およびBAT25の4種を用いる方法が効率的であることが見い出された.散発性大腸癌90症例を用いたMSI statusの検索の結果16症例(17.8%)がMSI腫瘍であった. 3) 抗体を用いたミスマッチ修復蛋白の検出 抗hMLH1抗体およびすでに作製した抗hMSH2抗体を用い,HNPCCの2家系3症例のうち1症例でhMSH2蛋白非発現例が見い出された. 散発性のMSI腫瘍で同様の検討を行ったところ,4例のhMSH2蛋白非発現および6例のhHLH1蛋白非発現腫瘍を見い出した. 4) 非発現機構の検索 RT-PCR法によるhMLH1蛋白のmRNAの検索でhMLH1蛋白非発現症例ではそのmRNAも検出されなかった.しかし,これら6症例の遺伝子の塩基配列の検索でmutationは発見されていない. 5) 今後の検討課題 hMSH2蛋白発現機構の解明および簡易検索法の確立を引き続き行う. また,症例を増やし,ミスマッチ修復異常大腸癌症例の臨床病理学的要因の検討を進める.
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