研究概要 |
ENNG(N-ethyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine)により作製したイヌ実験胃癌に対し、内視鏡下胃腫瘍に直接穿刺針を用いadenovirus vectorでHSV-tk(herpes simplex virus thymidine kinase)遺伝子をinに注入、プロドラッグganciclovirを静注する自殺遺伝子治療で、原発巣および胃所属リンパ節の広範な組織変性が惹起された。副作用の検討ではHSV-tk10^9 pfu投与後ganciclovir 100mg/kg3日間投与では中等度の肝障害を認め、HSV-tk 10^<10> pfu投与後ganciclovir 100mg/kg4日間投与では高度肝障害を認めた。高titerのadenovirus vectorを用いた胃癌自殺遺伝子治療では肝毒性の予防および治療が必要になる(Matsukura et al.Jpn J Cancer Res90:1039-1049,1999)。次にHSV-TKをアデノウイルスベクターで、MNNGで作製した雄ウイスターラット自家発生胃癌に直接穿刺針で5X10^8pfu投与し、ganciclovir 100mg/kg投与後の組織変化および体内でのHSV-TK遺伝子の推移を検討した。アポトーシスは、シャムオペレーション群に比し8日と30日で有意に亢進した(P<0.001)。組織学的な癌組織の変性、繊維化、壊死、アポトーシスは30日剖検群で有意に亢進していた(P<0.05)。末梢血でのHSV-TK遺伝子は、PCRおよびSouthern blot analysisの両法で投与30日まで検出された。この結果から(1)自殺遺伝子治療により、組織変性に先行してアポトーシスが起こる、(2)組織学的な治療効果の発現には30日を有する、(3)HSV-TK遺伝子は投与30日でも体内に存在することが明かとなった。
|