肺血管成長促進物質としてヘパリンに着目し、その作用機序を検証するため生後2日の仔兎(Newzealand White)にヘパリンとその拮抗物質であるプロタミンを投与した群をそれぞれ作成し、生食水を投与したコントロール群との間で14日間の薬剤投与終了時点で血行動態、組織所見、各種成長因子の発現について比較検討した。その結果、肺動脈圧はコントロール群に比してヘパリン群で低下し、プロタミン群で上昇していた。また、肺組織内の肺小動脈数はヘパリン群で増加し、プロタミン群で減少していた。この結果よりヘパリンが生後の肺血管の成長に関わっており、外部から投与されたヘパリンがその生理的肺血管成長を促進することが示された。その機序について、ヘパリン親和性の成長促進物質であるbasic FGF、VEGF、PGF、EGFの関与をNorthern Blot法とin situ hybridization法により現在検索中である。また、これらの小動物を用いた肺血管成長促進機序の解明と平行して臨床応用目的の大動物への血管成長促進物質投与法を検討し、皮下埋め込み型の静脈内薬剤投与インフュウザーによる持続的、あるいは間欠的投与を行う方針とし、羊を実験動物とした肺血管成長促進モデルの作成に着手した。この投与システムが実用化されれば先天性心疾患等の患者が家庭生活を営みながら肺血管成長促進の治療をうけることが可能となる。これは平成11年度に継続して実験をすすめる予定である。
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