研究概要 |
本研究の目的は,NOS遺伝子導入内皮細胞を用いたハイブリッド型小口径人工血管を開発することにある. 1. 成犬より外頸静脈を、採取し,コラゲナーゼ法にて血管内皮細胞を分離し血管内皮細胞増殖因子を含む液体培地中で培養,増殖させ本研究に使用した. 2. NOS遺伝子導入に用いるベクターについては当初リポソームをもちいた導入を試みたが,満足できる導入効率が得られなかったため,現在アデノウイルスやアデノ関連ウイルスを用いて導入効率の改善を試みている.遺伝子導入の確認はRT-PCRあるいは申請備品であるGeneRapidシークエンサを用いて行った. 3. 遺伝子導入による血管内皮細胞の抗原性(CD31,E-selectin,Tie-2,Flk-1)や,内皮細胞機能の変化の有無についてフローサイトメトリー,RT-PCR法,ウエスタンブロット法を用いて検討を行った. 4. 使用する人工血管についてin vitroでnon-coating,collagen- coating, fibr onectin-coating条件下で培養血管内皮細胞の生着率を比較検討した結果,血管内皮細胞の良好な生着と十分な細胞の増殖にはcollagen-coatingが最良であり,collagen-coating 人工血管を使用する方向で検討している. 5. 遺伝子導入に使用する血管内皮細胞について,臨床応用に向けてより低侵襲で採取する方法を検討しており,末梢血中から血管内皮の前駆細胞であるCD34陽性単核細胞をビーズ法を用いて分離し,培養することにより形態学的な血管内皮細胞への分化を確認している.今後はさらに分子生物学的手法を用いて内皮細胞への分化を確認した後に導入効率の良好なベクターを用いて,血管内皮前駆細胞へのNOS遺伝子導入を試みる予定である.
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