研究概要 |
本研究は、肺癌患者腫瘍のMAGE抗原発現の検討、MAGE発現腫瘍特異的細胞傷害Tリンパ球(CTL)の樹立、および肺癌細胞株の樹立を目的として行われた。この計画にもとづいて以下の結果が得られた。 1.肺癌患者腫瘍のMAGE発現の解析 20例の肺癌患者から手術時に採取した主腫瘍よりRNAを抽出した。RT-PCR法によりMAGE-1,2,3の発現の有無をそれぞれ解析した。従来の報告通り、いずれも約30%のRNA発現が認められた。 2.肺癌細胞株の樹立 患者腫瘍より分離した肺癌細胞の一部をScidマウス皮下に移植した。3ヵ月後、移植腫瘍の約30%が生着した。それらをカルチャープレートに移し、癌細胞株樹立を試みた。これまでに腺癌4株,扁平上皮癌3株,小細胞癌1株の樹立に成功した。 3.患者抹消血単核球(PBMC)よりMAGE蛋白特異的CTLを誘導 MAGE蛋白発現陽性患者より採取分離した抹消血リンパ球を、自家腫瘍細胞抽出蛋白でパルスした自家樹状細胞でIL-2およびIL-12存在下に共培養し,腫瘍特異的CTLを誘導を試みた。初回刺激より5週後にCTLが誘導できた。この表面マーカーを解析した結果、CE3/CD4陽性細胞群優位であることがわかった。誘導CTLの抗原特異性を、自家腫瘍抽出蛋白パルス樹状細胞を標的とした細胞障害試験にて解析した。抗原特異的細胞障害が認められた。 以上の結果より、MAGE抗原は肺癌細胞に高発現しCTLを誘導しうる強い抗原性を有していることが明らかになった。将来、肺癌患者に対する癌免疫治療の臨床応用も可能であると考えられた。
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